住宅購入を考えている人の中には、情報収集をしすぎるあまり、「結局何を優先して買えばよいのか?」と混乱してしまう方が多い。住宅購入は、人生で一番大きな買い物とも言われる決断。だからこそ、情報を見れば見るほど悩んでしまう。
今回はシックストゥリーズ合同会社 Keller Williams Tokyo(ケラー・ウィリアムズ・トウキョウ)の小林さんに、「買いたいが、なかなか決められない」状態を防ぐ賢い家の希望条件の決め方についてアドバイスを伺った。
まず3つの軸を定めよう
ー予算、エリア、築年数など、希望条件は何から決めればよいのでしょうか?
ストレスなく理想の家を買うためには、まず3つの軸で希望条件を定めましょう。
1つ目が予算です。いくら住みたい家が見つかっても、支払えないと意味がありませんね。現実的に余裕を持って買える予算を決める。これが最優先です。
2つ目はエリアです。「今の生活環境に不満があるから引っ越す」のか、「今住んでいるエリアのこういうところが気に入ってるから似ているところでもいい」のかを考えてみてください。これをもとに後からエリアの選択肢を広げることができます。
3つ目が築年数です。新築購入は確かに理想的ですが、中古は中古で、管理状態が担保されているかチェックできるなどのメリットがあります。古い=ダメ、とは一概には言えません。予算とのバランスを見ることが大事です。
この3つが決まっていないと、理想の家があるんじゃないかと探し続けてしまう、いわば白馬の王子様状態に陥ってしまいます。
ーまず予算ですが、実際どのくらいの目安で考えれば良いでしょうか?
月々の家賃として無理なく支払えるのはいくらか、から物件購入価格を割り出します。現在賃貸にお住まいであれば賃料がベースになります。その家賃と返済比率(年収における年間住宅に当てる金額の割合)を照らし合わせます。目安としては、年収のうち25%以下に収まることが理想です。
一般的に、ローンの借り入れができる額は年収の7倍程度です。こちらもこの通りに借りると支払い負担が多い印象です。
ーちなみに、共働きのご夫婦の場合はどうですか?
夫婦の場合、どちらか一人の7倍であればまだしも、世帯年収の7倍の借り入れは危険で現実的ではありません。
産休育休をはじめ、どちらかの収入が低くなった時のリスクが大きいですからね。
最初に、住宅購入後の将来設計、例えばふたりとも働き続けるのか、時短勤務なのかフルタイムなのか、などをエージェントやファイナンシャルプランナーなどに相談し、予算を決めるとよいでしょう。
ちなみに、共働きのご夫婦の場合は夫婦それぞれにローンを組む「ペアローン」が可能です。この場合、住宅ローン控除が二人とも受けられるなどのメリットがあります。
ーエリアの決め方についてお聞きします。希望のエリアが予算オーバーの場合、どのように広げれば良いですか?
エリアについては、家探しの初期段階では結構理想的に決めてしまって大丈夫です。大事なのは、そのエリアを選んだ基準を明確にすること。「今の生活環境に満足してるのか」と「家を買ったらどういう生活をしたいのか」という希望を満たしているのであれば、まずはそのエリアで探します。見つからなければ、今満足している要素を満たす内容を整理し他の街まで範囲を広げましょう。
ー「オススメの駅はどこですか?」という質問、よく聞きます。
これは答えにくいんですよね。「価値が上がりそうなところは?」というのも、将来の資産価値は予想しにくいので。
そのことも踏まえて、「みんなにオススメのエリア」というものはなく、その人の生活に合っているかどうかが全てだと思います。
ですから、私は普段その人がどういう趣味を持ってるのかとか、お休みの日は何をして過ごすのか、など、物件やエリアの前にその人の生活について聞くことが多いですね。
ーあと「都心部から30分圏内」のような探し方をされる方も多いです。
その質問も、正直お答えが難しいです。都内は特に選択肢が広すぎるので、結果的に物件選びに時間がかかってしまいます。
私の場合は、そういうお客様の場合は沿線で絞ります。沿線によって乗客や街の雰囲気が全然違うので、好みに合うか合わないかで生活の快適さが左右される、実は大事なポイントだと感じているからです。
ーでは、築年数に関してはどう考えれば良いでしょう。
先ほどもお話ししましたが、築年数が古い=ダメ、ということではないと考えます。ただ、10年くらいで売却する可能性がある人だったら、私は築浅物件を出来るだけオススメしています。
築古物件で大事なのは、管理状況を最初に確認することだと思います。
多くの不動産会社では、物件を絞った後に管理状態をチェックする流れが多いかもしれません。しかし個人的には物件を絞る前の比較的早い段階からチェックしてから、お客様にご提案しています。
3つの軸が定まった後に考える要素は
ー物件の広さですが、例えば共働きの夫婦二人暮らしの場合、実は何平米あれば十分、といった目安はありますか。
生活スタイルにもよりますが、個人的には60平米あれば十分なんじゃないかと思います。お子さんが生まれるかわからないご夫婦は、予算の中でも広さ重視で物件を選ばれているケースが多いです。ちなみに、住宅ローン控除は内法面積(壁の内側の部分の寸法で求められた面積)が50平米以上から適用されます。
ー購入に踏み切るタイミングもなかなか決めにくいです。
一般的にみなさんに共通する「この時期が買い時」というものは存在しないと思っています。
一つ基準として言えるのは、不動産の情報がガラッと変わるのは二ヶ月から三ヶ月だということです。つまりその間に、希望に合う物件を出来るだけエージェントに提案してもらい、その中でどうしても見つからない場合は、物件がリフレッシュされる2〜3ヶ月待ってみるのもありでしょう。とはいえ、100点の物件を見つけるのは難しいです。物件を減点方式でなく加点方式で見てみてください。
ーコロナで変わったかもしれませんが、駅徒歩の基準はありますか?
もし将来的に売るか貸すことを考えているなら、やはり出来るだけ駅近をオススメします。
逆にしばらく住むことを考えたら、駅から少し離れた方が落ち着いていることが多いので、住環境としては整っていますし、一概に駅徒歩何分が良いと区切るのは難しいです。
ーマンションの総戸数は気にするべきでしょうか。
はい。意外と生活に関係する要素だと思います。マンションの規模が大きくなるにつれ、修繕積立金の金額は負担割合が少額になる傾向があります。
また、タワーマンションの共用部分は、自分の生活にフィットしているかをチェックしましょう。使わないものに修繕積立金払うのは勿体無いですよね。豪華なタワーマンションだとプールや温泉が付いているところもありますが、その分お金はかかります。
満足した住宅購入ができる人は、優先順位の整理が出来ている
ー小林さんから見た、「なかなか買えずに悩んでいる人」の特徴はなんでしょう?
ネットの情報を過信している人ですね。物件情報のサイトよりかは、ノウハウ系のコラムを読んでる方にとても多い印象です。
情報収集はたしかに大切ですが、特にネットの情報は注意が必要でそもそも全部が合っている訳ではありません。
特に不動産領域のビギナーだと、断定的な表現の文章に影響を受けやすいと思います。その結果エージェントの提案を跳ね返してしまう方が多いです。
ー買える人と買えない人の違いは、妥協点を探せるかどうか、ということでしょうか。
そうですね。「この物件を買おう」という決断力も大事なところですが、妥協できるか、だと思います。全ての希望条件を100%満たす物件はほとんどありません。
ですから、出てくるかわからない理想の物件を待ちながら探すのではなく、あらかじめ優先順位を絞って、「この相場観の中でこの条件のマンションが見つかったら買う」という進め方だとストレスなく購入できると思います。
また、優先順位の整理はエージェントの腕の見せどころです。初めての購入だと特に、お客さん自身で考えるのは難しいので、例えば私は、まず一個物件を提案してみて気になるポイントはどこなのか、を探るやりとりをします。具体例があるとお客様もイメージしやすいからです。
妥協点をあぶり出し、エージェントと共有しながら物件を探していく。そしていい物件が出たらすぐ購入の手続きに移れるよう、事前準備をしておく。これが理想の流れだと思います。
住宅購入は、理想と現実のバランスをどう取るかが決め手です。Agentlyでは、今回お話を伺った小林さんのように、人生設計のヒアリングから寄り添ってくれるトップエージェントに相談することができます。ご利用は無料です。
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