「マンションの間取りは何を基準に選べばいいのだろう」
「いろいろな間取りがあるけど、どんな間取りがおすすめなの?」
マンションの購入を検討する際に、こういった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。マンションの購入は人生において大きな買い物です。これから長く住むことになるマンションを購入したあとで「もっと違う間取りを選べばよかった…」と後悔したくはありませんよね。
提案型家探しサイトAgentlyのエージェントによると、「住んでみたら間取りが使いにくかった」というのはよくある失敗談のようです。
そこで本記事ではマンションの間取りについて、選ぶ際の基準や考えるべきこと、注意点などを解説します。マンションを購入する際に考えるべき間取りの知識をすべて入れましたので、間取り選びで悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
マンションの間取り図を見るための基礎知識
マンション購入を検討する際には、マンションの間取り図や物件情報を確認した後、気に入った物件を内覧するのが一般的です。
まずは間取り図を見た際に部屋のイメージができるよう、以下の間取りの基礎知識を解説します。
1. 部屋のタイプ
間取り図では部屋の表記をアルファベットで省略しています。アルファベットが何を指すのかわからなければ、間取りをイメージできません。
一例ではありますが、間取り図に使用される代表的な表記を紹介します。
アルファベットの略称 | 表記が指す部屋 |
---|---|
L | リビングルーム(居間) |
D | ダイニングルーム(食事スペース) |
K | キッチン |
1部屋に上記の全てが集約されている部屋はLDKと表記されます。1LDKや2LDKのようにアルファベットの最初にある数字は、LDK部分以外にある居室の数を指します。
1LDKであれば、LDKの他に1部屋。2LDKであればLDKの他に2部屋です。
例)1LDK
例)2LDK
続いてL・D・K以外に、間取り図に使用される代表的な表記を紹介します。アルファベットだけではどういった意味かわからない表記が多いため、下記の表をご参考にしてください。
部屋数の表記は、2LDK+WICのように間取りに「+」記号をつけて表記されることが多いです。
S | サービスルーム |
DEN | 書斎(SやNと同義) |
N | 納戸(SやDENと同義) |
WIC | ウォークインクローゼット |
WTC | ウォークスルークローゼット |
UB | ユニットバス |
PS | パイプスペース |
CL | クローゼット |
MB | メーターボックス |
SIC | シューズインクローク |
S(サービスルーム)とN(納戸)、DEN(書斎)は、建築基準法上、居室として認められるための以下の制限を満たしていない部屋を指します。
- 採光に必要な窓などの開口部が居室の床面積の7分の1以上ある
- 換気に必要な開口部が床面積の20分の1以上である
ただし、サービスルームはあくまでも建築基準法上の制限で居室と表記できないだけで、居室として利用できないわけではありません。書斎としてテレワークスペースとして活用したり、収納にしたりとさまざまな用途があります。広さによっては寝室にして通常の居室と同じ用途でも使用できます。
? 間違えやすい部屋タイプ ?
最後に特に違いのわかりづらい部屋タイプの例を2つ紹介します。
1つ目はDK(ダイニングキッチン)とLDK(リビングダイニングキッチン)の違いです。DKとLDKは部屋数は同じですが、広さが異なります。
DKは4.5畳以上8畳未満、もしくは6畳以上10畳未満である一方、LDKは8畳以上もしくは10畳以上の広さが必要です。下記のように部屋数によって広さのルールが決まっています。
居室数 | DK | LDK |
1部屋 | 4.5畳 | 8畳 |
2部屋以上 | 6畳 | 10畳 |
部屋を見ただけでは明確な違いがわかりにくく、定義は公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会によって定められています。
2つ目は1Kと1Rの違いです。1Kは居室とキッチンが分かれている間取りで、1Rはキッチンも1つの部屋に含まれているシンプルな間取りを指します。
部屋数を決めておくと物件を絞り込みやすくなるので、まずは「子ども1人と夫婦それぞれの寝室が欲しいから、3LDKがいいな」などと考えておくといいでしょう。
2. 部屋の方位
マンションの間取りを選ぶ際には部屋の方位も重要です。方位によって日当たりや眺望が大きく異なるため、日当たりや眺望を重視したい方は確認しましょう。
太陽は東から昇り西に沈みます。寝室として使いたい部屋が東向きであれば朝陽が入り、リビングが南向きであれば日中の日当たりが良いのが一般的です。
ただし、常に「東向きが良い」「南向きが良い」とは一概には言えません。なぜならマンションの立地によっては、南向きに別の建物が建っており、日当たりや眺望が良くないマンションもあるためです。
特に都心に立地するマンションは、建物同士が隣接するため、図面だけでイメージするのは難しいのです。間取り図の方位は参考程度にして、日当たりや眺望は実際に内覧して確認しましょう。遠方の物件を探しているなど現地まで行けない際には、Googleストリートビューで確認するのもおすすめです。
日当たりを重視したい方は、異なる時間で複数回内覧するのもいいでしょう。
3. 部屋の広さ
マンションの間取り図で示される部屋の広さは、不動産会社によって表記が異なります。部屋の広さを表す単位は主に3つです。
単位 | ㎡で表した場合の面積 |
㎡(平米) | 1m × 1m |
畳 | 1.62㎡ |
坪 | 約3.306㎡ |
㎡は縦と横の長さから求められ、畳数は畳の大きさでイメージできますが、最も馴染みがないのは坪数ではないでしょうか。おおよその計算にはなりますが、1坪=約2畳です。
ファミリー層に人気の高い3LDKの間取りはおおむね70㎡前後の物件が多いです。ただし、部屋の位置関係や廊下の長さによって広さの感じ方は異なるので、あくまで目安と考えましょう。
70㎡以上の3LDKの場合、各居室は6畳以上であることが多いです。6畳であればセミダブルベッドを置いても、加えてテーブルや椅子などを配置できます。子ども部屋や寝室として利用したい場合は、6畳以上を目安にするといいでしょう。
ダブルベッドやクイーンベッドも配置できますが、その場合は他の家具を少なめにする必要があります。8畳ほどあると、クイーンベッドを置いてもゆとりがあります。
間取り図で大まかなイメージをつけ、実際の内覧の際にはメジャーを持って居住スペースを採寸してみてください。
4. 部屋同士の位置関係
3LDKのように部屋数の多い間取りの場合、部屋の位置関係も重要です。部屋同士の位置関係によって、同じ大きさの間取りでも使い勝手や感じ方が異なります。
例えば廊下が短く部屋同士の間隔が近い間取りの場合、それぞれの独立したプライバシーが保たれないと感じてしまいますが、その分各部屋を広く利用できるメリットがあります。
また、部屋に柱や梁(はり)が出ている場合は、室内のレイアウトが制限されてしまい家具の置き場に困る可能性があります。廊下の広さや柱、梁などは間取り図だけでイメージするのが難しいため、特に気になる点は実際に内覧して確認しましょう。
マンションの間取り選びの考え方
ここまでマンションの間取りの基礎知識について解説しました。ここからは基礎知識に基づき、マンションの間取り選びの考え方として以下3パターンを解説します。
どういった生活をしたいかは人によって異なります。それぞれの考え方ごとにチェックリストを設けているので、自分はどういった点を重視しているかを考えてみましょう。
1.現在のライフスタイルに合わせる
最も選びやすいのは、現在のライフスタイルに合わせて考えていくパターンです。現在住んでいる住宅と似たような間取りや、不満に感じる部分を改善した間取りを選ぶことで、生活の充実度が高まります。
例えば下記の間取りでは、4畳のDEN(書斎)があります。居室としては手狭ですが、テレワークが多い方は仕事部屋としても利用できます。
将来的に子ども部屋が必要となるような3人家族には向かないものの、DINKs世帯にとっては趣味や仕事用の部屋があり、利便性が高い間取りと言えます。
ライフスタイルは人それぞれです。下記に考えておきたいライフスタイルの項目を記載しているので、参考にしてみてください。
間取り選びに影響するライフスタイルのチェックリスト |
1. 最も多くの時間を過ごす部屋はどこか(寝室、リビング、キッチンなど) |
2. 出入りの激しい部屋はどこか |
3. 現在の世帯人数で最低限何部屋必要か |
4. キッチン、浴室、洗面所は複数人が同時間帯に使うか |
5. 現在使っている家具で継続して使いたいものはあるか |
ただし、結婚や子どもを授かることを考えているのであれば、現在のライフスタイルだけを意識すると住み替えが必要になる場合もあるので注意しましょう。
現在のライフスタイルと次章で解説するライフステージにどちらも対応できる間取りを選ぶためには、将来の可変性や対応の仕方などを不動産会社の担当者やエージェントに相談するのがおすすめです。
2.ライフステージを考慮する
世帯人数が増える予定があるなら、次のライフステージを考慮しましょう。
たとえば、下記の2LDKの間取りでは、LD部分に壁を作ることで、もう一部屋きれいな間取りの部屋を増やせます。
- まだ独立した子ども部屋がいらない間はLDを広く使う
- 独立した子ども部屋が必要になった段階で、壁を作り部屋を増やす
- 子どもが独立したあとは、壁を取り払いもとに戻し広々と使う
このようにライフステージに応じて使い分けできる間取りもあります。下記にライフステージのチェックリスト例を記載しました。
間取り選びに影響するライフステージのチェックリスト |
1. 子どもは何人考えているか |
2. 独立した子ども部屋を与える予定か |
3. 親と一緒に住む可能性はあるか |
4. 老後、体が不自由になっても住み続けるか |
間取りの変更は可能ですが、知識のある人でないと理想通りの変更が可能かの判断が難しいです。部屋の構造によっては抜けない壁があるため、心配な方はライフステージの計画をエージェントに伝えましょう。
上記は「マンション購入時は考えていなかった世帯人数の増加」が発生したケースです。Aさんにも部屋を分けるリフォームができるという基礎知識はあったものの、実際に分けられるかは確認していませんでした。
3.理想の生活をイメージする
マンションの購入は新たな生活のスタートです。現在のライフスタイルやライフステージを考慮するのもいいですが、自分の理想の生活を再現できる間取りを選ぶのもおすすめです。
例えば下記のようなオープンキッチンの間取りは、キッチンがリビングやダイニングで遮られていないため、子どもの様子を見ながら料理をしたいという理想を実現できます。
また、バルコニーが広いためガーデニングをしたい方にも向いているといえるでしょう。
下記に理想の生活の例を記載しているので、ご参考にしてください。理想の生活は人によって大きく異なるため、自分の理想を考えてみましょう。
間取り選びに影響する「理想の生活」例 |
1. 子どもや家族様子を見ながら料理をしたい |
2. 日当たりのいいベランダで洗濯物を外に干したい |
3. 朝起きたら日当たりの良い部屋で朝日をあびたい |
特に変更が難しい水回りであるキッチンや浴室、ベランダについてこだわりや理想がある方はイメージが必要です。
現在は人生100年時代と言われる長寿時代です。子育て中のことはもちろん、自分が将来どのような生活をしたいかを考えておくと良いでしょう。
一方、理想の生活に合わせて、現在の住居とは大きく異なる間取りを選ぶと「イメージと違った…」と感じるケースもあります。現住居と間取りを大きく変える場合は、メリットだけでなく、デメリットも考慮しましょう。
現住居とは違うものの、気になる間取りの物件があったら、エージェントにその間取りの特徴を聞いてみるのがおすすめです。
本章で紹介した間取りを考える際の重要ポイントまとめ |
1. 最も多くの時間を過ごす部屋はどこか(寝室、リビング、キッチンなど) |
2. 出入りの激しい部屋はどこか |
3. 現在の世帯人数で最低限何部屋必要か |
4. キッチン、浴室、洗面所は複数人が同時間帯に使うか |
5. 現在使っている家具で継続して使いたいものはあるか |
6. 子どもは何人考えているか |
7. 独立した子ども部屋を与える予定か |
8. 親と一緒に住む可能性はあるか |
9. 老後、体が不自由になっても住み続けるか |
10. イメージしている理想の生活はあるか |
【パターン別】おすすめのマンション間取り例
ここまでマンションの間取り選びの考え方を解説しました。家族にとって重要度の高い部屋や動線、必要な部屋数がイメージできたでしょうか。
ここからはマンションの代表的な以下の間取りのタイプをもとに、どういった家族構成、ライフスタイルの方におすすめかを解説します。
間取り選びの考え方はわかったものの、まだ具体的なイメージができていないという方はぜひご参考にしてください。
1. 縦リビング
例)2LDKの縦リビング
縦リビングは名前の通り縦長のリビングを含む間取りです。リビングだけでなく、住戸全体も縦長の場合が多いです。
きれいな長方形の間取りのため、壁沿いにソファや大型テレビ、スピーカーなどの家具を設置しやすくデッドスペースが少ないのが特徴です。しかし、廊下が長い場合が多く、面積のわりには部屋が広く感じないケースもあります。
縦に長く動線が細いため、人数の多い家庭や、朝の身支度の時間が重なる家庭の場合行き交うのが大変なのがデメリットです。
2. 横リビング・ワイドスパン
例)3LDK横リビング・ワイドスパン
横リビングは縦リビングの逆で、リビングが横長の形状です。住戸全体も横長の場合が多いです。横リビングの中でもバルコニー側の間口が広いものは「ワイドスパン」とも呼ばれます。
横リビングも縦リビングと同じく、デッドスペースが少ないのが特徴です。また、縦リビングタイプとは異なり、バルコニーに面する居室を確保しやすいメリットがあります。上記の例では全ての居室がバルコニーに面しています。
一方、日当たりが良いものの、気温の高い夏は室内が暑くなりやすいといったデメリットもあります。また、部屋と部屋がバルコニーで繋がっているため、ガーデニングをしたり洗濯物を干したりと、バルコニーを利用する際は隣の部屋にいる家族への配慮が必要でしょう。
3. リビングイン
例)3LDKリビングイン
リビングインの間取りはリビングが中心にあり、各居室に行くためにリビングを通る必要があります。リビングが廊下を兼ねているため、廊下部分が少なく、面積分室内を有効活用できます。
他の形の間取りよりも各居室を広く設けられるため、実際の面積よりも広く感じるられるタイプです。リビングを通って各居室に行くため、年頃の子どもがいる家庭でもコミュニケーションを取りやすいのが特徴です。
しかし、リビングに来客がいる場合でも、移動の際に必ずリビングを通らなければいけないデメリットがあります。
4. 田の字型
例)2LDK田の字型
田の字型の間取りは玄関からリビングまで、廊下が真っ直ぐあり、左右に居室があります。上から見ると田んぼの田のような形をしていることから田の字型と呼ばれています。
田の字型マンションの場合、上下階の住戸も同じ間取りであることが多いです。そのため下階住戸の寝室上に、自宅のリビングがあるような構造にはなりにくいので、騒音問題も発生しにくいのが特徴です。小さな子どもがいる家庭にもおすすめできます。
また、田の字型の間取りは、上記の例のようにLDK部分が広く作られていたり、扉一枚を挟んでLDKの隣に居室があることが多いため、LDK部分を区切りやすいタイプが多く、将来的に部屋数を増やしたいと考えている家庭におすすめです。
5. 角住戸
例)3LDK角住戸
角住戸は「角部屋」とも呼ばれ、片側だけに隣室がある部屋を指します。正確には間取りというより、住戸の位置を示します。
両隣を部屋で挟まれている住戸に比べ、採光部が多く、バルコニーも2箇所以上あることが多いです。そのため、バルコニーでお茶ができたり、ガーデニングがしやすかったり、プライベートな環境を確保できるメリットがあります。
角住戸は一般的にマンション内でも広いお部屋が多いため、人数の多い家庭におすすめです。また、小さな子どもがいる家庭でも、隣の住戸と隣接しない居室に子ども部屋を作るなど工夫することで騒音問題も回避しやすいです。
角住戸は建物の屈折部に位置する場合もあるため、個性的な間取りも多く、デッドスペースができないよう家具の配置などを工夫する必要があります。また、中住戸(上下左右を別の住戸にはさまれた住戸)と比較すると断熱性が低いため、光熱費がかかりやすいデメリットもあります。
6. キッチンの間取りタイプ
ここまで住戸全体の間取りタイプについて解説しましたが、最後にキッチンの間取りについても紹介します。キッチンの間取りとして代表的なのは以下3つです。
キッチンの配置によって、部屋の雰囲気も大きく異なるので、どれが望ましいか参考にしてみてください。
1)対面型
対面型キッチンはキッチンがリビング側を向いています。小さな子どもがいる家庭や、ペットを飼っている家庭におすすめです。料理をしながらでもリビングの様子を確認できるため、気を配りつつ料理ができます。
なお、左右どちらかが壁についているキッチンを「ペニンシュラキッチン」、左右どちらも壁につかず独立した島のようになっているキッチンを「アイランドキッチン」といいます。
上記のような対面型キッチンは、壁付型のキッチンと比べ、キッチンの配置によってリビングが狭くなってしまうデメリットがあります。
2)壁付型
キッチンが壁に付いている間取りを壁付型といいます。壁付型キッチンはリビングに家族が集まることが多く、リビングを広く利用したいという家庭におすすめです。
壁付型のキッチンは壁に沿ってキッチンを配置するため、キッチンの後ろにあるリビング部分を広く利用できます。限られた間取りを活かせるのが壁付型キッチンのメリットです。
しかしながら壁に向かって作業するため、家族とのコミュニケーションが取りにくいことや、冷蔵庫などをキッチンの横に設置するため横移動が多くなる、水回りの生活感がリビングから見えてしまうデメリットもあります。
3)独立型
独立型キッチンとは、上記間取りのようにリビングダイニングと壁で区切られているキッチンを指します。独立型キッチンは料理に集中したい方や来客が多い家庭におすすめです。
キッチンが独立していることで料理に集中できるかつ、居室へにおいが広がりにくい特徴があります。キッチンは調理用具や洗い物の置き場所になるため、生活感を感じさせやすいですが、独立型キッチンでのれんをつけるなどすれば、プライバシーを確保できます。
一方、料理中はリビングの様子が確認しにくく、小さな子どもがいる家庭やペットを飼っている家庭では不安を感じやすいデメリットもあります。
キッチンの間取りまとめ
メリット | デメリット | |
壁付型 | 間取りを有効活用できる (リビングを広く利用できる) | 臭いがリビングに移りやすい |
独立型 | ・料理に集中できる ・プライバシーを確保できる | 子どもやペットに気を配りながら 料理をするのが難しい |
対面型 | 子どもやペットの様子が見えやすい | 配置によってはリビングが狭くなる |
マンションの間取りはどのくらい変えられる?
失敗しないマンションの選び方を解説してきましたが、「間取りが生活に合わない…」と感じた場合、選択肢として住み替え、または間取りの変更があげられます。マンションは専有部分であれば、基本的には自由に間取りを変更可能です。
本章ではマンションの間取り変更において重要な以下3点を解説します。
マンションにはマンション毎に管理規約があり、間取り変更のルールは異なることに注意してください。
1. 変更しやすい間取り例
変更しやすい間取りの特徴は、住戸の形が長方形や正方形のような整った四角形であることです。間取りはリノベーションによって変更できますが、キッチンや洗面台、浴槽などの設備はオーダーでもない限り形を変更できません。
そのため間取り変更の場合は、設備が入るかどうかを考えなければならないのです。間取りが複雑な多角形や円形の場合、希望の間取りがあっても設備が入らない可能性があります。
正方形や長方形のような間取りであれば、間取り変更の際も比較的自由に間取りを考えれます。
上記の間取りの場合、7畳と6.8畳のベッドルームの壁を抜けば、簡単に広い部屋を1室作れます。
室内全体を大規模に変更する場合は、キッチンや洗面台、浴室などの設備が入るかどうかを考慮しなければなりませんが、上記のような正方形に近い間取りの場合は設備を設置しやすく、希望の間取りを作りやすいのです。
逆に以下のような不規則な多角形の間取りと丸型の間取りは、変更の自由度は低くなります。
どちらも個性的な間取りですが、正方形や長方形の間取りと比較すると間取り変更の自由度が下がってしまいます。
2. 抜けない壁
マンション内の壁には抜ける壁と抜けない壁があります。建物の「躯体」と呼ばれる建築構造を支える骨組みは抜けません。
抜けない壁(構造壁)が変更希望箇所にあると、希望通りの間取り変更はできない場合が多いです。将来的に間取り変更を検討している場合は、購入する前に間取り変更を妨げるものがないかを確認しましょう。
抜ける壁・抜けない壁はマンションの間取り図だけでは判断できません。壁が抜けるか気になる場合は、建築やリノベーションに精通したエージェントに内覧に同席してもらい、アドバイスを求めることが重要です。
3. 水回りやパイプススペース
マンションの間取りを変更する場合は、壁だけでなく水回りやパイプスペースにも注意が必要です。マンションは共同住宅であるため、配管などは上下階と繋がっています。そのため、個別には変更できない部分が存在します。
例えば以下の間取りを見てください。水回り付近に「PS」という表記があります。PS=パイプスペースを示し、配管が通るため、この部分は変更できません。
PSが動かせないため、必然的に水回りの設備はPS周辺にまとめることになります。間取り変更を考えている場合は「間取りタイプ」「抜けない壁」「パイプスペースの位置」に注意しましょう。
間取りを理想通りに変更できない場合は住み替えもあり
間取りを理想通りに変更できない場合は住み替えを検討しましょう。住み替えと聞くとハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、近年では住み替えは当たり前になっています。
日本では新築主義が根強かったですが、徐々に中古マンションの需要が高くなっています。以下の表は不動産研究所による「マンション市場動向」と東日本不動産流通機構による「月例マーケットウオッチ」から作成したものです。
新築マンションの新規発売戸数は平成20年に急落してから下降気味、中古マンションの成約件数はやや上昇傾向があるとわかります。
平成28年には東日本レインズによる集計開始以降初めて、首都圏における中古マンションの成約件数が新築マンションの発売戸数を逆転したという報告もあります。今後もさらに中古市場は伸びていくと考えられるでしょう。
そこで考えるべきは将来売却しようとした際に「自宅は売れるのか」という点です。ここからは「売りやすい間取りの例」と「間取り以外の売りやすくなる要素」について解説します。
1. 売りやすい間取り例
マンションの売却のしやすさには、間取りが大きく影響します。国土交通省の令和2年度住宅市場動向調査報告書では、分譲マンションを選択した理由として「間取り・部屋数が適当だったから」を挙げた世帯が82.4%を占めています(複数回答可)。
1位:間取り・部屋数が適当だから(82.4%)
2位:住宅の広さが十分だから(50.9%)
3位:住宅のデザインが気に入ったから(44.4%)
4位:台所の設備・広さが十分だから(42.6%)
5位:浴室の設備・広さが十分だから(29.6%)
間取りはある程度変更できるとはいえ、多くの人が最初から「間取りや部屋数が適当か」を基準に選んでいるとわかります。
では、どういった間取りが売りやすいのでしょうか。結論、売りやすいマンションの間取りとは「住居がある地域の居住者ニーズに合った間取り」です。売りやすい間取りは購入者のターゲットによって異なります。
たとえば、住んでいるエリアが、人気学区でファミリー層が多いのであれば3LDK以上の間取りの人気が高くなります。また、都心の職場へのアクセスがいいのであれば、1Rや1LDK、2LDKといった少し小さめな間取りでも売りやすいでしょう。
調査からもわかるように、購入者は間取りの変更を前提としてマンションを選んでいません。変更する可能性はあるにしても、売りに出された時点の間取りが自分の希望と合うかを考えています。
したがって、「売りやすい物件 = 地域に多い世帯のニーズに合った間取り」となるのです。将来売却する予定があれば、購入するエリアのニーズや、どういった世帯が多いのかを調べましょう。
自分で調べるのは大変なので、不動産会社やエージェントに聞くのもおすすめです。
2. 間取り以外の売りやすくなる要素
なお、売りやすいかどうかは間取りだけでは決まりません。その他にも販売価格を左右する要素として以下があげられます。
- 立地
- 周辺環境
- 築年数
- 室内状況
- マンションの管理状況
- 周辺の売却物件
特にマンションの立地は非常に重要です。国土交通省の「不動産取引価格情報」のデータベースでは駅からの距離と取引価格に以下の相関性が見えています。
東京都の中古マンション取引価格と駅からの距離の関係性* **
最寄り駅からの距離< | 平均取引価格 | 平均面積 | 平均㎡単価 | 単価比較 |
1〜5分 | 5,286万円 | 69.9㎡ | 75.6万円 | 100% |
6〜10分 | 4,856万円 | 69.9㎡ | 69.5万円 | 91.9% |
11〜15分 | 4,007万円 | 69.3㎡ | 57.8万円 | 76.4% |
16分以上 | 3,157万円 | 69.6㎡ | 45.4万円 | 60.0% |
*2016年第4四半期〜2020年第4四半期の5年間
**用途「住宅」、今後の利用目的「住宅」の物件
車を持つ人が少ない東京都では、駅から16分以上の物件は1〜5分の物件に比べて、価格が60%になっています。もちろん、駅近の物件は購入時の価格も高くなりますが、売却可能性が高いのであれば考慮すべきでしょう。
マンションの間取りで後悔したくないならプロのアドバイスが大切
マンションの購入は人生において大きな買い物です。これから長く住むことになるマンションを購入したあとに「もっと違う間取りを選べばよかった」と後悔したくはありませんよね。
本記事ではマンションの間取りについて、選ぶ際の基準や考えるべきこと、注意点などを解説しました。ある程度は間取り図で確認できますが、変更できない部分や間取り変更の自由度を判断するには専門知識が必要になります。どのくらい間取りを変えられるのかなどは、担当エージェントや不動産会社に聞いたほうが早いケースが多いです。
また、マンションの間取り選びはライフプランに沿って将来を見据えながら考える必要があります。そのため「今はこういう状況だけど、将来的にはこういったライフプランを持っている」とエージェントに相談してみてください。どのような間取りが合うかを提案してくれるでしょう。大きな買い物だからこそ、第三者目線を入れて判断していきましょう。