早いような短いような、日本で新型コロナ感染者が初めて確認された1月17日からなんともう半年が経過した。
感染状況は拡大し、東京都などを中心に緊急事態宣言が出た4月7日からももう3ヶ月以上が経っている。自粛も少し緩和されたものの、東京を中心に感染者数は再度拡大をたどっており、今後の動きは未だ読みづらい状況だ。
コロナショック発生当初は、「不動産価格暴落」や「不動産バブルの終焉」といったようなセンセーショナルな記事も多く上がっていたが、緊急事態宣言から3ヶ月たった今、事実として今不動産市況に何が起きているのか?ちょうど中古住宅の6月市況データが出たこのタイミングで、市場をファクトに基づいて考えていきたい。
※”不動産”といっても、オフィス・ホテルといった商業不動産から、賃貸・分譲といった居住用と幅が広い。当記事は居住用不動産についての言及であり、エリアは首都圏中心に関することについてご了承頂きたい
出典/東日本不動産流通機構
これを見る限りコロナ前の正常化に進んでいるように見える。「少なくとも半値になる!」という人もいたが、そこまでの予兆は見えていないと捉えるのが正しいだろう。
ちなみに売出し物件数も減少しているが、それ以上に成約件数は減少している。となると在庫が増えているのかと思いきや、在庫件数も減少している。これについてはコロナ禍において売り出しを止めているケースがあるということの現れだろう。
3ヶ月ごとの集計で見ると、前Q比-4.4%、前年同月比-0.4%と下落トレンドにあることは間違いないが、この成約数の落ち込みの中でこの価格を維持しているのは今買う層=購入動機が強い。ということになるのだろう。
出典/東日本不動産流通機構
郊外シフトの兆しはあり
大幅な減少している成約件数だが、エリア別にみると興味深い。東京都全域+神奈川都市部の減少に対して、埼玉・千葉・神奈川郊外の減少幅のほうが小さいことがわかる。
リモートワークの一般化によって、通勤の利便性のニーズが薄まり価格が安い郊外のニーズが高まるのではと言われていたが、この数字を見る限りその兆候が感じ取れる。
一方、都市部には投資物件の取引も郊外に対して多く存在するため、その減少分が含まれてしまっている部分もあるため、”郊外シフト”が立証されるにはまだ時間がかかるだろう。
出典/東日本不動産流通機構
賃料は過去最高値を更新。変わらない上昇傾向
緊急事態宣言時には少し落ち着きを見せた分譲マンション賃料相場だが、6月にはいりこちらは上昇&過去最高値を更新した結果となった。
この要因については分譲マンション=投資用賃貸マンションに比べてグレードが高く、特に投資用新築ワンルームマンションの減少によって、分譲賃貸マンションの人気が高まっている可能性がある。
出典/東京カンテイ
不動産価格には遅効性がある
6月の数字を見た結果を一言でいえば「なんか戻ってきたぞ・・・」ということになるが、今後はどうなるだろうか。
1つ言えることは、コロナショックによる経済ダメージの甚大さは疑いの余地はなく、消費者層に対する影響は今後如実に出てくるだろう。政府主導による融資・補助金政策はあるもの、6月のボーナス減少、今後の賃金上昇を期待できる状況ではない。
以前記事でも書いたが、不動産価格の変化には遅効性がある。そのため、過去の例からも鑑みて、半年から1年の遅効性があるならば、3月から始まったコロナショックの影響による値下がりおよび底値は9月から12月あたりに生じるだろうと読んでいる。(より詳細な解説は以下過去記事を参照いただきたい)
(参考)日経平均株価と不動産価格推移
通常物件探しには3-6ヶ月時間がそもそもかかるため、ソーシャルディスタンスを保ちながら、今から家探しを進めておくのが現状の正解だと言えるだろう。
家の買い時において、残る未確定の要素は
新型コロナウィルスの感染拡大が今後どうなるか、、にかなり依存するところがあり、こればかりは専門家でも予測は難しい。日程が決定された2021年のオリンピックも本当に実施されるのかまだわからない。
しかしながらこれ以上経済を止めるわけにはいかないため、再びの緊急事態宣言の実施は考えにくい。サービス事業者もかなり対策を十分に実施できている状態である。
そうなると国内不動産において残る重要な要素は住宅ローン金利と、海外投資家の存在である。
まず住宅ローン金利については、金融緩和政策の維持が日銀総裁から宣言されていることから、引き続き低金利状態が維持されるだろう。これ以上の金利の引き下げは銀行側の収益性の関係から実現は考えにくく、あるとすれば消費増税時にあったような住宅購入関連補助金政策が発生する可能性はあるが、直近は旅行業・飲食業といった感染病起因の売上減少が大きい業種に限られることが予想される。
不動産投資家にとっては依然として「今買う理由がない」状態がしばらく続く。特に海外個人投資家は、やはり物件を見ずして買うことはあまりなく、渡航制限もあるなかで需要が戻ってくるのはだいぶ先になるだろう。
つまり、一般消費者として買う側のメリット「低金利」と「価格の停滞(または下落)」は今後も続く可能性があると考えられる。
まとめ
引き続きコロナ禍の収束の見通しは立たず、不確実性が強い社会・経済状況であるが、6月の首都圏中古不動産価格実績から、現状および今度の不動産市場を見立てていった。
- 6月の成約件数は未だ昨年比-11%なものの、前月比ベースで大きく戻し、経済活動の復旧が見て取れる状況に
- 価格は4月の昨対-6%から一転、6月+2.8%と戻し基調に
- 東京都・神奈川都市部に対して埼玉千葉神奈川郊外の成約件数の減少幅は小さく、郊外シフトの兆しが少し見られる
- 金融緩和は今後も維持が見込まれ、住宅ローンも低金利状況が続く見通し
- 買い時は今年の秋ー冬に生まれると見込まれ、購入に向けた準備は今から始めるのが正しい
以上が現在の不動産マーケットの現況だ。ただ一つ言えることは、少なくともコロナ発生時に一部のメディアで謳われた「不動産価格半減!」には程遠い状況ではあるということ。ただ、不動産価格はこれから数字に反映されるフェーズに入るため、今から行動し、価格の変化を注視しておくと、賢い買い物ができるかもしれない。
文/TERASS CEO江口亮介
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