文:坂根康裕
画像:(株)PRエージェンシー
ザ・ハウス南麻布/2LDK・186.16m2
私などは『デザイン性を徹底的に追い求め~』といった言い回しに触れるたび、連鎖反応の如く「不便」「我慢」あるいは「実利より見た目」といった、何かしら代償のようなものを思い浮かべてしまうところがある。しかし上掲の間取りは、その逆だ。まるで「実用性をデザイン化したら、こうなった」かのような、暮らしやすく洗練された空間に見てとれる。
まず、高級マンションの前提ともいえる「PP(プライベート・パブリック)分離」が効いている。家の品格を定める玄関まわりの雰囲気も良い。玄関扉を開けた途端、目の前に広がる「PASSAGE(パッセージ/ホールの意)」は印象的だ。パブリック空間を隔てる扉は無い。DENの多様な使い方も考えてのことだろう。
リビングダイニングは整った長方形で、大きな窓はシンメトリーを徹底。どんな家具を、どのように配置してもサマになるのでは。キッチン天板両脇のストレージ、シューズボックスも左右対称を踏襲。キッチンの真ん中に大きなカウンターを据え置いていることや(1Bedroomにもかかわらず)ゲスト用のトイレを設けていることからして、「気心知れた仲間たち」を頻繁に呼び寄せることが多いオーナーと推察。皆で料理を楽しみながら、飲んで、食べる。センターオープンのキッチン扉を閉める機会は少なそうだ。
プライベート空間もゆったりとしたつくり。こちらも窓は大きく、シンメトリー。マスターベッドルームとドレッシングルームを区切る扉もない。必要性を考えれば、至極真っ当な選択に思える。クローゼットの扉は徹底して引き戸。開けっ放しにしておけば、ワードローブをディスプレイのように見せることができる。ブティックを再現したような空間は、中央も広く、ストレスなく全身のコーディネートがチェックできる。
とかくパウダールームの機能性が優れていると感じる。完全なるプライベートなゾーンであるにもかかわらず、トイレには扉を設けてある。夫婦で身支度が重なることも考えてのことか。バスルームは2000×2400の特大サイズ。シャワールームも完備。支度を仕上げていく洗面台は、真ん中を陣取る。否応なく、気分を上げていってくれる水回りといえよう。「ラグジュアリー」を謳うマンションの特殊住戸は、必ずと言っていいほどマスターベッドルームの隣に併設されるパウダールームは「きらびやかさを競う」ように設計されている。「ハレとケ」や「オンとオフ」。その切り替えがスムーズに図れるように、と解釈している。仕事もプライベートも双方充実させるためには、欠かすことのできない暮らしのコツのようなものだから。空間をして自らを変わらしむ。これは、実用的な間取りのひとつの解なのかもしれない。
*イラストは『住み替え、リフォームの参考にしたいマンションの間取り』都心に住む by suumo「間取りの恋して」Vol.1-Vol.43 より転載
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