今回取材したリノベーションマンションは、渋谷・表参道エリアに建つ築年数約20年のマンション。
リノベーションマンションと言うと、設計事務所などに「このような家にしたい」と要望を伝え、その要望を汲取った設計事務所がデザインを制作、その後予算と相談しながら素材・建材・設備を選んでいく工程を想像する方が多いでしょう。
まさに前回ご紹介したお部屋は、その方式でした。
ところが、今回の事例は家主が”コンセプト・デザイン・資材選び・設備選び”などを全て自分主導で探し、選んだという、工程からオリジナルの“一点もの”部屋。
「お任せする」だけでは得られない満足度と、資産性を見据えた”一点モノ”の戦略性について、お話を聞きました。
<リノベーションプロフィール>
- 所在地:渋谷区
- 広さ:約60㎡
- 間取り:2DK+S→1LDK
- 築年数:約築20年
家主はなんと学生時代から不動産を購入し、運営をしていたそう。その過程でリノベーションによって不動産の価値が上がることを実感。今回のリノベーションをきっかけに、物件選定だけではなくリノベーションや設計、デザインなどまで勉強したという力の入れよう。
Q.コンセプトはどこから着想しているのでしょうか?
A.テレビの両脇にある白とシルバーを基調としたスピーカーがすごく気に入っていて。フランスのDEVIALET社のスピーカーなのですが、マンションの購入を決めた時点で、このスピーカーを中心にリノベーションをしよう、と決めていました。このスピーカーに合う部屋にすることを起点に、天井や壁紙、テレビ台やテーブルなどを全て決めています。
TVの配線が目立たせないように壁掛けにしたのもそのため。TV台もスピーカーの配色に合わせ、天板がシルバー、側面が白のものを探しました。
TV背面の壁は巨大な1枚板を組み合わせていて、直線的でフラットな印象にすることでスピーカーの丸いフォルムが引き立つよう、意識しています。これを見つけるまでかなり苦労しましたが…
Q.もともとはファミリータイプだったとのこと。その割に、お部屋がスッキリ見えます
A.間取りについては、リノベーション前は2LDK+Sといわゆる都心の一般的な二人暮らし・ファミリー向けマンションの間取りでした。ただ私は単身なので、自分に合わせてかなり変更しています。リビングとダイニングの間に壁があったので取払い、キッチンも吊り戸棚は取って開放的にしています。
また、玄関を入ってすぐのところにサービスルームがあったのですが、取り払って玄関を拡張し、一角をシューズインクローゼットにしました。靴のほかにもアウターをかけるハンガーを置いたり、スーツケースを置くのに使っています。外出時に必要なものをまとめるスペースがあると、他の部屋もスッキリするので、変えてよかったです。
空間を広く見せるために照明の位置を壁際に寄せたり、天井の凹凸を無くしシームレスに空間が繋がるようにするなどの細かい工夫もしています。
Q.このシャンデリア、個人的に気になります…!
A.これはジノ・サルファッティの名作シャンデリアのジェネリックですね。ジェネリックでなければかなりの高額だったと思います。こんな風に一つ一つ自分で探して調達しているものもあるので、色々と手を加えてはいても、全てにものすごくお金をかけている、という訳ではないんですよ。
このバーカウンターも、遊びにきた友人には驚かれますが、ネットオークションで購入したので通常よりはかなり安く入手できています。理想を詰め込んだ家ですが、自分で提案したり、手を加えている部分は多くて。ベランダの花壇も、自分でプランターや土を買ってきて並べたりしました(笑)。
Q.換気口も、珍しい形をしていますね
A.そうなんです。これも自分でかなり探して、付けてもらいました。せっかくこだわったリビングでも、こういう機能的な部分はそのままになりがちで。部屋の雰囲気に合うものを探し出しました。
他にも、トイレや通路などの壁紙も自分で選んだものに変えています。
高級品の壁紙は繊細で地の壁の凸凹を拾いやすいので、従前の壁紙をはがしてその上に貼る、というだけでは綺麗な仕上がりにはならないんです。そのため、壁や天井などは壁紙の本来の美しさを活かせるよう、一度全て解体して造作し直してもらいました。
細部にわたって込められた家主のこだわりを聞くと、プロにお任せするだけでは実現できない理想もある、ということを気づかされます。
真の理想を実現するには自らインプットをし、足を使って探す労力も必要かもしれませんが、その先の日々の暮らしで得られる満足を知っている家主にとっては、一つ一つを選ぶ手間こそ、楽しみの一つなのです。