2020年春開業に向け 着々と建設が進む駅前
2018年の12月に名前が発表され、そのインパクトで世間を賑わせたJR山手線の新駅、「高輪ゲートウェイ」。建設は着々と進んでおり、来年春の暫定開業の実感が増してきた。
新駅創設による経済効果はなんと六本木ヒルズを超える1兆4,000億円にのぼるとされており、新駅と合わせて約13haという敷地大規模な駅前開発も同時に進行する。参考に、六本木ヒルズの敷地が約11.6ha、東京ミッドタウンが約10.2ha、恵比寿ガーデンプレイスが約8.3ha。それらを超える規模の開発が5年ほどで一気に出来上がる予定だ。
きたる東京オリンピックに向けて来年の2020年春に暫定開業となり、2024年度から本開業となる。高輪ゲートウェイは再開発が進む田町~品川エリアを結ぶ新たなスポットとなることは間違いない。
暫定開業に向け続々と情報が出ている高輪ゲートウェイ駅。現在明らかになっているその全容をみてみよう。
- 2020年春開業に向け 着々と建設が進む駅前
- 49年ぶり新駅計画に高輪が選ばれた理由とは?
- カタカナ混じり、名前の由来は?
- 大規模新駅、デザインは誰が?
- 新駅だけでない、まちづくりとの連動も期待
- 2027年にはリニア中央新幹線も開通
- 新駅の開業による大きな変化に期待が高まる
49年ぶり新駅計画に高輪が選ばれた理由とは?
陸路・空路ともに揃う交通利便性
「高輪ゲートウェイ駅」は、山手線1971年に開業した「西日暮里駅」以来、49年ぶり30番目の新駅計画だ。都心の動脈となる山手線の49年ぶりの新駅設置に高輪地区が選ばれた主な理由としては何といっても、優れた交通利便性がある。
隣駅の品川駅は、2027年開業予定の東京・名古屋・大阪間を約1時間で結ぶリニア中央新幹線の始発となり、より一層ターミナル駅としての国内の磁力が増す。
また隣接する京急電鉄の泉岳寺駅は羽田空港と直結しているため、海外とのアクセスも優れている。そして羽田空港と成田空港を結ぶ都心直結線構想が実現すれば、都心直結線は隣接する泉岳寺駅に停車するため高輪エリアは国内にとどまらず世界の玄関口としてさらに引力を増していくだろう。
今だ残っていた手つかずの土地がグローバルシティへ
また、新駅創設予定の土地はもともと田町電車区と呼ばれたJR東日本の東海道線の車両を収容する車両基地の跡地であり、手付かずの大規模な土地が高輪に存在していたこともある。
さらに高輪を含む品川エリアは、欧米のグローバル企業をアジア統括拠点・研究開発拠点として東京に誘致する「アジアヘッドクォーター特区」として東京都から選ばれている。品川エリアは国際競争力を高める特区として外資企業の一層の参入が見込まれている。そして外資企業の誘致が成功すれば、外国人のビジネスパーソンや国内のエグゼクティブ層からの人気が一層高まることも見込まれる。
JR東日本ニュース「田町〜品川駅間の駅名決定について」/JR東日本
カタカナ混じり、名前の由来は?
JR東日本では新駅の名称を、初めて公募により決定。64,052件の応募の中から「高輪ゲートウェイ」が選ばれた。JRは「新しい街は、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点の形成を目指しており、新駅はこの地域の歴史を受け継ぎ、今後も交流拠点としての機能を担うことになる。 新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました。」と発表。
山手線では珍しいカタカナ入りの名前が話題になったが、これは土地の歴史を紐解くとなるほどと理解できる。
高輪は、古来より街道が通じ江戸の玄関口「高輪大木戸」として賑わいをみせた地だ。大木戸とは江戸時代に国境や都市の出入り口に設けた境界に設置された簡易な関門のこと。つまり高輪は江戸時代から人の玄関口であり、今後さらに世界に向けて開くゲートとなる、という、高輪という街の一貫した役割にちなんだものとわかる。
令和の時代も高輪ゲートウェイとして高輪大木戸の歴史を受け継ぎ、国際的な交流拠点としての機能を担っていくのだろう。
大規模新駅、デザインは誰が?
新国立競技場を手掛ける隈研吾 氏による建築デザイン
新駅のデザインは、新国立競技場の設計でも知られる世界的建築家の隈研吾 氏が担当した。コンセプトは地域に開かれた広場としての駅舎。
障子をイメージして「膜」や「木」等の素材を活用し、日本の折り紙をモチーフにした大屋根、駅舎東西面に設置された大きなガラス面、コンコース階の約1,000 ㎡の大きな吹き抜けは、日本の魅力を発信しつつかつての日本にはない開放的で明るい空間を演出する。
また、駅舎に大きなガラス面を設けたことで街と駅との連携が意識されている。駅から街、また街から駅を見通せることで一体的な空間が生まれる。駅と街が連携したイベントを行えるよう、駅の改札内に約300 m²のスぺースが設置される。
同氏は2009年に都内の港区南青山にある根津美術館の建築も手がけている。メッキの鉄板でできた大屋根や軒下の清涼感あふれる生垣、竹竿などが特徴的だ。ここでは日本らしさをクールかつモダンに昇華している。
根津美術館と高輪新駅において大屋根や日本らしさを追求する点は共通しているが、高輪ゲートウェイは日本らしさを木や光の暖かさで表現しているところが大きな特徴といえるだろう。例えば双方に共通している大屋根の素材が根津美術館では亜鉛メッキ、高輪ゲートウェイでは膜や木を使い障子をイメージしている点に注目すると両者のコンセプトの違いがわかりやすい。
照明は六本木ヒルズを手掛けた面出薫 氏
また、照明デザインはJR東京駅丸の内駅舎ライトアップや東京国際フォーラム、JR 京都駅、六本木ヒルズなどの照明計画を手掛けた面出薫(めんでかおる)氏によるもの。
コンセプトは「街のランドマークとなる暖かな光の駅舎」だ。
JR東日本ニュース「田町〜品川駅間の駅名決定について」/JR東日本
新駅だけでない、まちづくりとの連動も期待
生まれ変わる品川
品川北地区の再開発プロジェクトである「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)」では、「CITY UP! 駅から、街から、未来を作ろう」をスローガンに掲げ、多様な魅力あるまちづくりの実現を目指す。
街全体のデザイン構想は、日本初進出となる「Pickard Chilton(ピカード・チルトン)」、及び「隈研吾建築都市設計事務所」が手がけ、日本の新たな玄関口となる国際交流拠点にふさわしい景観を実現する。各街区の複数建物を「日本列島の島々」に見立て「アーキペラーゴ(列島)」を創出するなど、ユニークで魅力的な街づくりが行われる予定だ。
JR東日本ニュース「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)が都市計画決定されました/JR東日本
品川・高輪・泉岳寺の一体大規模開発
高輪ゲートウェイ駅に隣接する泉岳寺周辺は東京都から都市再生特別地区に指定されており、現在品川駅北周辺地区開発 (2019~2024年度 目標)、泉岳寺駅地区再開発 (2019~2024年度 目標)、泉岳寺周辺地区再開発 (2020~2024年度 目標)といった3つの大規模な再開発プロジェクトが同時進行されている。
このように、品川・高輪・泉岳寺など周辺地域が一体となって大規模な開発が進められていることが品川エリア開発の特徴だ。
新たな文化形成にも注力
また、品川エリアで新たな文化・ビジネスが生まれ続けるための仕組みづくりの一環としての共創プロジェクトとして、TokyoYard PROJECTがある。
2024年頃のまちびらきに向けて、この場所を舞台にあたらしいものを生み出したい人たち、またそれを支えたいと思う人たちと共創していくための取り組みだ。
「世界に開かれた『あたらしい東京』の入口となる場所であり、世界へ羽ばたく玄関口」としてのTokyo、「車両基地(ヤード)であったこの場所は、はじまりの場所であり、常につくり続ける未完成の場所」としてのYardという意味合いを持つ。
高輪の玄関口としての役割や車両基地の意味が汲まれたプロジェクト名となっている。
全容はまだ明らかになっていないが、「街のすべてが実験場。」と唄い、様々な取り組みが生まれてくるだろう。
2027年にはリニア中央新幹線も開通
2027年には、品川-名古屋間を40分で繋ぐリニア中央新幹線が開業する見通しだ。最高時速は 500kmで、45年には品川-新大阪間を67分で運行するという。
リニアの開通により近畿圏と中京圏、首都圏の3大都市が一本で繋がり、首都圏の玄関口としての品川の影響力がより強固なものになると予想されている。リニアの始発となるリニア中央新幹線品川駅はJR品川駅港南口の真下で既に着工が始まっている。
品川は東京駅を超える力のある存在となるのか。
今後、品川エリア全体は国際的な「ゲートウェイ」として国内でも国外でもますます磁力を増していく。高輪ゲートウェイはその中でも主要な結節点として大きな役割を果たすだろう。
近年の虎ノ門の事例を見るように、再開発によって土地の利便性・利用価値が上がり資産価値が期待できる。
TERASS編集部